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浦和地方裁判所 平成6年(わ)238号 判決

被告人

1 本店所在地 埼玉県志木市本町六丁目二二番二八号

法人の名称

株式会社 成神基礎

代表者の住所

埼玉県新座市野火止四丁目一番三五号

代表者の氏名

神力

2 本籍 青森県黒石市大字中川字篠村一二二番地

住居

埼玉県新座市野火止四丁目一番三五号

職業

会社役員

氏名

神力

生年月日

昭和一六年一月一五日生

罪名

法人税法違反

裁判所

浦和地方裁判所第三刑事部

裁判官

小池洋吉

出席検察官

佐藤文

宣告の日

平成六年六月一三日

判決主文

被告会社株式会社成神基礎を罰金三二〇〇万円に被告人神力を懲役一年に各処する。

被告人神力に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

一 罪となるべき事実の要旨

被告人株式会社成神基礎は、埼玉県志木市本町六丁目二二番二八号に本店を置き、土木基礎工事業等を営んでいる資本金一〇〇〇万円の会社(平成四年二月一日、有限会社から株式会社に組織変更)であり、被告人神は、被告人会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが、被告人神は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、外注費を架空計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一 平成二年二月一日から平成三年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億六〇五二万五六九四円であったのに、平成三年三月二九日、埼玉県朝霞市大字溝沼一八九〇番地の九所在の所轄朝霞税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三五一万四四四九円でこれに対する法人税額が四五一万五九〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額六三三二万三〇〇円と右申告税額との差額五八八〇万四四〇〇円を免れた

第二 平成三年二月一日から平成四年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が五二九六万三七七一円であったのに、平成四年三月三〇日、前記朝霞税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三八三万五九八四円でこれに対する法人税額が四三九万四二〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一九〇六万七二〇〇円と右申告税額との差額一四六七万三〇〇〇円を免れた

第三 平成四年二月一日から平成五年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一億一〇四〇万四八二円であったのに、平成五年三月二九日、前記朝霞税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一六九三万二三九八円でこれに対する法人税額が五五六万一七〇〇円である旨の偽りの法人税確定申告書を提出し、もって、不正の方法により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額四〇六一万二二〇〇円と右申告税額との差額三五〇五万五〇〇円を免れた

ものである。

一 適用した罰条

法人税法一五九条、一六四条一項、刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、二五条一項

一 量刑の事情

本件は、被告人神が、その経営する株式会社成神基礎(但し、平成四年一月三一日までの商号は有限会社成神基礎)の法人税の確定申告に際し、平成二年度から同四年度までの三事業年度にわたり内容虚偽の申告書を提出して合計一億八五二万円余の法人税を免れたという法人税法違反の事案であるところ、被告人は、貧乏な生い立ちを経て会社を設立したものの、苦しい会社経営が続いてその日の米さえない時期もあったが、いわゆるバブル景気の好況に浴し、業績の良いときに財産を蓄えたい、あるいは、故郷にカラオケ・ボックスを設立して、成功したことをくにの人に知らせたいなどの気持ちから、本件多額の脱税を行ったというもので、その動機に同情すべき点はなく、その逋脱率も九割近い高率であるから、ギャンブルや異性関係等にも費消している点も勘案すれば、犯情は悪質と言わなければならない。犯行態様を見ても、労務費、外注費を水増しするべく、架空の請求書・領収証等を作成し、仮名・借名の預金口座を開設するなど積極的かつ巧妙であり、また、本件では、会社社屋等建設に伴う土地取得に際し、裏金を要求されてこれを捻出するためにした裏金工作が、本件犯行の契機となった事情も窺えるから、健全かつ適正な経理に背馳する経営態度も窺えなくはない。かかる犯行が横行するときは、国家財政を危殆に瀕せしめる恐れがあるとともに、国民の納税意欲を減退せしめ、ひいてその規範意識を揺るがして国家の存立をも脅かしかねない恐れがあるから、被告人、被告人会社の刑事責任には重いものがあると言うべきである。

しかしながら、他方、被告人は本件事実を素直に認めて反省の情を示していること、被告人会社では本件後コンピューターを導入し、経理の陣容を整えて、定期的に税理士のチェックを受けるなど物的・人的な再発防止策を講じて経理の健全化を図っていること、被告人が出稼ぎ人から身を起こし多数作業員を使用する会社の経営者として身を立てたことは被告人の努力の結果として評価すべきであること、被告人会社は、本件が新聞等で報道され、また、本件後修正申告が行われ、本税一億一四六九万円余りの支払を完了したほか、延滞税・重加算税分計約四八〇〇万円を支払う予定であるから、これらにより被告人会社は実質的な社会的制裁を受けたともいえること、被告人には交通罰金前科が一犯あるだけであることなど被告人及び被告人会社に有利ないし酌むべき事情も認められるので、以上一切の情状を勘案して、被告人及び被告人会社に対し主文掲記の刑を量定したうえ、被告人に対しては、社会内における更生の機会を与えるを相当と思料し、その刑の執行を猶予することとした次第である。

(裁判官 小池洋吉)

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